天地人 大沢しのぶ

Shinobu Osawa





ふくよかでスリリングな和太鼓奏者

 1974年、秋田県大館市生まれ。昭和59年、町おこしと青少年健全育成を目的に、当時の大館市商工観光課長である田畑準吉氏が大館の地場産業である「曲げわっぱ」に皮を張り、和太鼓を考案。結成された「大館曲げわっぱ太鼓」で10歳より太鼓を始める。厳しい練習のもと、めきめきと頭角を現し、各種太鼓コンクールで優勝を重ねる。

 秋田杉の「曲げわっぱ太鼓」は大館が誇る郷土の音。それを全国に発信するために活動の場を広げ、岩手県陸前高田市の「全国太鼓フェスティバル」や、東京の国立劇場「日本の太鼓」への出演などを果たし、「秋田に大沢あり!大館曲げわっぱ太鼓あり!」と全国にその名を轟かせる。

 地元の学校における太鼓指導や市事業の「達人講座〜和太鼓コース」開設や地域での町おこしイベントなど、郷土の音を広め伝える活動に意欲的に取組み、平成16年度「秋田県芸術選奨ふるさと文化賞」を受賞。

 また、一人の女性和太鼓奏者として2006年より「ヒダノ修一with太鼓マスターズ」や、フュージョン系バンド「ブロンズ」にも参加。2008年には「アフリカ会議野口英世賞」受賞式で演奏を披露するなど、活動の幅を広げている。

 「大館曲げわっぱ太鼓」の将来を担い、新しい伝統を作るべく、伝統の太鼓と現代和太鼓の融合に挑戦する大沢には、日本創作太鼓界からも大きな期待が寄せられている。

出逢いは未知なるもの

 2000年大間ジローと出会い、2003年「天地人」に参加。
大間とは同じ高校の先輩後輩の間柄。年齢差も違えば、生きて来た環境も、音の和と洋の違いもある。だが、舞台に上がり両者が叩き始めた瞬間には、すべての制約は消え失せる。

「天地人」の大沢として

 「元々、杉の木は柔らかいので、できあがった太鼓の音も柔らかく『ドーン』という力強い一般的な太鼓音というより、『ポワーン』とした音とでも言いましょうか。柔らかく優しい響きがあります。強さに訴えるだけではない響きを出していきたいと思います」。

 血が沸き立つ野性味、そしてマグマのような激しいうねり。それに加えて、大沢は温もりある独特な音を叩きだす。その響きは、東北の山麓に似てふくよかだ。さらに、従来の太鼓を変えていこうとする大沢の強い意気込みが、熱いビートとなって鍛え上げた全身からほとばしる。

 「天地人は傑出したユニットです。メンバー皆が一手、身体の動きまできっちり揃えて叩く日本の太鼓とは異なり、何でもありの世界。決めた手より、その場の、その時でしかないフレーズもたくさん出てきてジャズ的要素も強い。一期一会の音に対応できる適応力や瞬発力が必要なんですね。私自身も感じるドキドキワクワク感を観る人にも感じて貰えたら嬉しいですね」。


 大沢はさらにこう語る。
「古くから太鼓は伝達手段として使われてきました。日本では、天照皇大御神が岩戸に隠れ世界が闇に包まれた時、岩戸の前で踊りを踊ったのに太鼓が使われたとも言われています。私にとって太鼓は心を写す鏡のようなもの。楽しく叩けば楽しく響き、つれなく叩けばつれなく響く。太鼓の前では邪念を捨てクリアな自分でありたい。本番直前、打ち出す前の一瞬の静けさに、このうえない至福を感じます」。

 地域のオリジナリティに根ざした、躍動感あふれる太鼓奏者というだけではない。大沢は繊細な音色とダイナミックな動きを併せ持つ新時代の太鼓奏者として全国から注目されている。

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